昨晩こんな夢を見ました。?
三間四方ほどの隅に支柱を立て麻の布が張られた陣幕の中で篝火が燃えている。見上げれば満天の星空だった。背丈ほどの陣幕の隙間から冷たい乾風が吹き込む。炎が振れ、火がぱちぱちと音をたてる。自分は大柄な男で、顎に髯を生やしていた。革の衣に身を包み、帯を締め、腰に刀を吊るしている。
その世、自分は武将であった。自分は大陸の東にある小さな国に生まれ、若くして兵を引き連れ国を出た。以来、大陸を西に遠征し、諸国との戦を繰り返した。自分は大層勇敢な武将で、挑む戦に負けることがなかった。自分は懐に一枚の地図を携えていた。その当時の大陸の地図である。戦の終わる度に自分はその地図を取り出し、征服した国を朱に染めた。地図にある国を次から次へと朱に染め、自分は大陸を西へと進んだ。そして、この度の戦が最後の戦であった。自分は最後の戦に勝利した。国を出て、二十余年が過ぎていた。
今宵、自分は大陸の西の果ての地に張られた陣幕の中にひとりいる。自分は永い遠征を共にして草臥れた地図を懐から取り出し、篝火の際に置かれた雑作ない木の机の上にそれを広げた。さかんに燃える焚松の炎が大陸の地図を照らす。自分は朱の墨壺に筆を浸け、地図の上にある西の果ての国を一思いに朱に染めた。それから机の上に筆を置き、感慨深く満天の星空を見上げた。もはやこの大陸に征服する国はない。その達成感に浸り、自分はもう一度、机の上の地図を見た。自分は大陸を制覇したのだ。地図の上にある全ての国が朱に染められた筈であった。けれども、地図の上には白く残っている国がひとつあった。その国をも朱に染めようとして、自分は筆を取り直した。
その時である。突然、陣幕が激しく揺れた。驚いて背後を見れば、勇猛な家来の一人が幕を切り裂き、刀を振りかざして自分に襲いかかって来た。不意を襲われ、一刀のもとに首が飛んで地図の上に落ちた。地図の上に最後まで残った白い国は自分の生まれた国だった。?
Nakatani







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