スウェーデンに移り住んだ日本人が現地で自宅を新築したときの話です。地方の行政庁に建築許可を申請しました。日本の確認申請のような手続きですが、内容は使う外壁材、屋根材、主に外観のデザインが街並みに調和するかの審査で、その点は十分に考慮して申請されたのですが、そのままでは認可されず、提出した図面に対し役所から是正の要請がありました。是正の内容は玄関の土間と框の段差がいけないということでした。その家に住むのは長く日本の住宅に住み慣れた人なので、家に上がる前に靴を脱ぐ習慣があります。その為に玄関に土間が欲しかったのです。それがいけないと言われ、その人は役所に文句を言いに出かけます。何故に玄関に土間を取ってはいけないのかと。その時に応対した役所の担当者の答えはすばらしい答えで、感動ものです。
玄関の土間は日本人のあなたには便利かもしれませんが、あなたがこの家に住まなくなった後にこの家に住むのは日本人ではなく、スウェーデンの人です。スウェーデンでは玄関で靴を脱ぐ習慣はありませんから、家に入ってすぐに段差があるのはとても危険なのです。あなた以外の人にとって危険な建物を許可する訳にはいかないのです。ご理解下さい。担当者の答えに納得し、その人は役所の指導に従い、街並みに調和した玄関に土間のない美しい住宅をスウェーデンで新築しました。
これは郷に入れば郷に従えというような単純な話ではありません。この話は日本人とスウェーデンをはじめとする欧州の人との住宅に対する考え方の根本的な違いを表しています。日本人は、住宅はあくまでも私有財産であると考え、欧州の人は、たとえそれが私有であっても、住宅は公共財産であると考えます。日本人は自分だけが住みやすければいい、自分勝手な家を建て、欧州の人は自分の後に住む人も住みやすい家を建てようとするのです。欧州では日本のように一部の企業や、個人の勝手で住宅が建てられるのが許されないのです。住宅に対するこの考えの違いが、日本の住宅が一世代で消耗され、築20年から30年で粗大ゴミとなり、欧州の住宅が100年以上住み継がれ社会資産を形成する大きな理由です。
このスウェーデンでの話は、長期優良住宅を推進しながら、性能や数値ばかりに拘り、住宅の本質を見ず、相変わらず大手プレハブ優遇の政策しか取れない国交省の役人に是非、聞かせてやりたい話です。この話から長期優良住宅の本質が見えてきます。
Nakatani


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